海賊版サイト復活なるか!プロバイダーを弁護士が訴えた?

ここ1、2ヶ月で「漫画村」「Anitube」「Miomio」などの海賊版サイトがアクセス不可になるなどブロッキング(遮断)する対策が施され話題を呼んでします。

しかし、新たな展開がありました。

なんと、海賊版サイトのブロッキングを実施しないようプロバイダーに求める訴えを起こした弁護士がいるようです。
海賊版サイトには著作権侵害等の観点からして批判的な声が多い中、ブロッキングを実施しない訴えをするのはどういうことなのでしょうか?

政府までもが動きブロッキングを施行していく発表をしているわけですから、この展開はかなり注目を浴びることとなるでしょう。

さて、一体何があったのか詳しくみていきましょう。

海賊版サイトのブロッキングを実施しない訴え

讀賣新聞によれば、今月26日に埼玉県の弁護士が、プロバイダー会社「NTTコミュニケーションズ」を相手取り、遮断を実施しないよう求める訴訟を東京地裁に起こしたとのこと。

訴状では、「NTTコミュニケーションズ」とユーザー間の利用規約にブロッキングの規定はなく、ブロッキングは電気通信事業法が禁じる「通信の秘密の侵害」にあたると主張しているそうです。

私も、漫画村の件などで調べ物をしている時に、誰かがツイッターで「ブロッキングしたら通信の秘密の侵害にあたるんじゃないの?」と言っているのを見かけた記憶があります。

まさに、それを弁護士が訴えているということになります。

しかしながら、今回の件についてNTTコミュニケーションズは「訴状が届いておらず、コメントできない」としているそうです。
訴状が届いてないということは、まだ訴えられたわけではなさそうですが、今後訴状が届いたら裁判になる可能性がありますね。

状況があまり明確になっていないので今後の動向を見守る必要がありますね。

ただ、今回の肝になっている”通信の秘密”というのはどういうものなのでしょうか?
知らない人も多いかと思いますので、調べてみました。

通信の秘密とは?

通信の秘密とは、個人間の通信の内容及びこれに関連した一切の事項に関して、公権力や通信当事者以外の第三者がこれを把握すること、および知り得たことを他者に漏らすなどを禁止することになります。
通信の概念はどのようなものが該当するかというと、信書、電話、電波、電子メールなどがあてはまります。

また、通信の秘密は不特定多数への表現・情報の伝達にあたる「検閲の禁止」と対として考えられる場合が多いようです。

では、通信の秘密の意義についてみてみましょう。
通信の秘密の意義は大きく分けて2つあります。

「積極的知得行為の禁止」と「漏洩行為の禁止」です。

積極的知得行為の禁止

積極的知得行為の禁止というのは、基本的に検閲を禁止するものであり、郵便物や通信物を検閲してはいけませんということです。
また、通信の存在自体に関する調査も積極的知得行為の禁止に含まれるため、かなり広い範囲を禁止行為としています。

なので、電気通信事業者や郵便局などはこれを侵してはいけないということになります。

漏洩行為の禁止

漏洩行為の禁止とは、読んで時の如く、職務上知り得た通信に関する情報を他に漏らしてはならないことです。
その漏洩行為の相手方は、公権力であっても、私人であっても関係なく侵してはいけないものなっています。

これはよくニュースになったりするので、理解しやすいかなと思います。
情報をバンバン漏らされてしまっては困りますからね。笑

その他例外

このように厳しく禁止行為を定めているわけですが、もちろん例外があるわけです。
通信の秘密の限界とも言われますが、保障にも一定の内在的制約があることは一般に承認されています。

どんなことに対して承認されているかというと、犯罪捜査のケースです。
重大事件に関して、郵便物や通信したものの中にも証拠物が含まれている可能性が強いことから、要件を満たせば押収することができるようになっています。

捜査で必要な時に、押収できないとなると困ってしまいますからね。

ただ、どこまでが捜査に必要なものかの判断は非常に難しいため、必要以上の押収を許すこととなると違憲の疑いが強いという学説もあるんだそうです。

同じく、通信の傍受についても一定要件を満たしていれば、捜査のために傍受を行うことは許されています。

海賊版サイトのブロッキングにはどう関係する?

もっと詳しく知りたい場合は、wikipediaなどで調べてみてください。

上記のことを踏まえて、海賊版サイトのブロッキングは「通信の秘密」を侵害しているのかどうかをみてみましょう。

これを考える上で、似たような前例があるのでそれを参考にしてみます。

2006年5月にぷららネットワークスが「Winny」の遮断を発表したことに対し、総務省が「通信の秘密の侵害に該当し、違法である」という指摘がなされました。

Winnyというのは、日本で開発されたファイル交換ソフトのことです。

音楽、動画、pdf、ゲームソフト、パソコンソフトなどあらゆるものがWinny上で共有され、全て無料で入手できてしまうというものです。

これについては、Winnyなどの違法性の高いP2Pを遮断するサービスを提供することになりました。
しかしながら、その後利用者の希望に応じて遮断が解除できるなどの幾つかの条件を付して総務省が容認したとされています。

要するに、このケースでは、完全に遮断することはできなかったということになりますね。

しかし、どうやらその後に、特定のソフトウェア(P2Pなど)による通信をインターネットサービスプロバイダが遮断する場合のように通信の秘密の侵害が行なわれた場合などは、違法性阻却事由が存在し、違法とはされないと解されている、という記載を発見しました。。

かなり難しい話なので私も全て理解でいているわけではありませんが、この例から今回のブロッキングについて考えてみましょう。

弁護士がプロバイダーを相手取って「通信の秘密」を侵害していると訴えた場合、この訴えは認められない可能性が高い気はします。

漫画村などの海賊版サイトには、違法性阻却事由が存在すると思われるので、プロバイダーがブロッキングしたとしても違法とはならないかなと。

万が一、プロバイダーのブロッキングが違法となった場合は、海賊版サイトの扱いが結構難しくなりますね。
遮断できなくなってしまうわけですから、アクセスが可能になり利用できてしまいます。

例え、Googleが検索結果から削除しようともドメインが分っていればアクセスできますからね。

今回のこの訴訟の勝敗で大きく事態は変わるかもしれませんから、注目が集まりそうです。
しかし、今のとこNTTコミュニケーションズに訴状が届いてないとのことなので、実際に裁判があるかはわかりませんが・・・

ということで、今回は通信の秘密という観点から海賊版サイトについて考えてみました。

P.S.

法律ッテ ムズカシイ・・・笑