あなたはジブリ作品といえばどの作品をまず思い浮かべるでしょうか。
2016年にジブリ総選挙というものがスタジオジブリ主催で行われた際には1位は「千と千尋の神隠し」でした。
2~5位までの上位作品は順不同で「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「魔女の宅急便」「もののけ姫」の大人気作品と推測されています。
(中間結果発表で公表されたタイトルです。1位以外の最終的な順位発表はされませんでした。)
やはり、宮崎駿監督の全盛期の作品は強いですね。
今回も前回の記事と同様、総選挙の上位タイトル「もののけ姫」についての記事を書かせていただきます。
もののけ姫は謎が多くて考察のし甲斐がありますね。
多くの謎や、不思議なキャラクター、幻想的な世界観が人気上位の理由なのかもしれません。
今回は物語のキーキャラクターである「シシ神」についてです。
インパクト大の見た目と、ラストシーンに至るまでの行動など、存在感がすごく、もののけ姫は「シシ神」なくしては語れません。
にもかかわらず、シシ神が一体何者なのかということはあまり言及されていなくて、他の考察サイト様でも公式なのか非公式なのか曖昧な情報が多いようです。
ここでは、登場人物のセリフやシシ神の行動などから読み解きつつ、それっぽい考察をしていこうと思います。
また、この考察では「もののけ姫はこうして生まれた」、「折り返し点」といった宮崎駿監督がもののけ姫に関して述べていることをなるべく取り入れています。
他サイト様と同様、数多ある解釈の一つとして気軽にお読みいただければと思います。
目次
シシ神様とは一体何なのか?
シシ神様とはちょっと顔の怖い自然界の神様です(真顔)
・・・本当はその一言で終わってしまいそうですが、たぶんこれを読んでいる方はもっと突っ込んだ話が知りたいと思うので、もうちょっと深掘りします。
「シシ神とは一体何だったのか」を考えるにあたって宮崎駿監督がもののけ姫を制作する際に何に影響を受けたのか、そして、もののけ姫を通して何を伝えたかったのかを考える必要がありますね。
キャラクターのセリフからヒントを得る
「シシ神様は一体何者なのか」という考察をする前に、まず関係者(キャラクター)の証言(セリフ)を振り返りましょうか。
考察する為に重要なヒントになります。
※キャラクターたちのセリフはこちらのサイト様を参考にしています。
興味のある方は読んでみるともののけ姫のお話を振り返ることができますよ。
彼らの証言から見えてくることは、シシ神は人や動物、草木といったあらゆる生命を生かしたり殺したりできる自然界の神様といったところでしょうか。
ポイントは森に住む神なのに、森を攻める人間達と戦わず、シシ神の森を守る動物達を救う訳ではないという事ですね。
自然が出てくる物語・ドキュメンタリーで良くある話なんですが、「自然を大切にしないと、いつか人間に災いが訪れる」というメッセージが込められている作品って結構あります。
「だから、自然を大切にしようね」的な結論になりがちなんですよね。
もののけ姫も、簡単に言ってしまえば人間VS自然(動物)という話ですし、最後ディダラボッチが大暴れするので「自然を大切に」という作品と思われがちです。
が、シシ神はナゴの守を助けず、アシタカの傷を癒したり、ディダラボッチになった時に人間だけを襲わず、森の命も奪いました。
「自然を大切にしようね」というメッセージを込めるなら、動物や草木の命を殺す必要はないはずです。
人間だけでなく自然も平等に殺してしまうことから、どうやら宮崎駿監督がこの作品に込めたメッセージは、また別のところにあるといえます。
宮崎駿監督ももののけ姫を通じて「自然環境の問題を訴えたいわけではない」と公言しています。
シシ神もただ、守らなければならない自然の代表として描かれた訳ではなさそうです。
では、この「もののけ姫」をとおして宮崎駿監督は何を伝えたかったのでしょう?
それが分かるとシシ神が一体何のために登場したのか、何を象徴したものなのかが少しだけ見えてくると考えます。
シシ神様のモデルは何?
シシ神には特にモデルはない、とされています。
強いていうなら鹿の形をしていますが、顔は猿のようですし、足は鳥の爪みたいだし、いろいろな動物をごちゃまぜにしたような見た目ですよね。
しかし、モデルとまではいかないですが、宮崎駿監督が参考にしたであろう神様が実はいます。
宮崎駿監督が、もののけ姫を作成するに当たって影響を受けている作品は「ギルガメッシュ叙事詩」という古代メソポタミア文学です。
そしてギルガメッシュ叙事詩の中に森の神殺しの話があります。
ざっくり要約すると、ギルガメッシュとその仲間が、フンババという森の神様を殺してしまう話です。
シシ神とギルガメッシュ叙事詩の関係について調べてみると、もののけ姫との共通点が結構あってかなり興奮します。
Wikipediaからギルガメッシュ叙事詩の一部文章と、フンババについて書かれた文章を引用します。赤字で書かれているところに注目して読んで頂けると「うわぁ・・・」ってなります。
先ほどのキャラクター達の証言を振り返りながらお読み下さい。
ギルガメッシュ叙事詩「森の神殺し」のお話(一部抜粋)
―――森に入った2人が杉の立派さに心を奪われていると、ほどなくしてフンババが駆けつけてきた。シャマシュは2人に「恐れるな」と声を掛け、北風や南風など8つの風を起こして援護し、フンババを降参させる。するとフンババが命乞いをするので、ギルガメシュは聞き入れようとするがエンキドゥは殺すことを勧める。フンババが息絶え森が静けさを取り戻すと、2人は杉を伐って船を造り、杉の大木とフンババの首を持ってウルクへ帰還。―――
(Wikipediaより)
フンババとは
その容貌は異形であり、「剣呑な口は竜、顔はしかめっ面の獅子、胸は荒れ狂う洪水」と例えられる他、以下のようにも描写される。「彼が誰かに目を向けたとき、それは死を意味する」「フンババの咆哮は洪水であり、彼の口は火を意味し、吐息はまさに死である!何者かが森に踏み入ったとすれば、彼は100リーグ離れた場所からどんな森のざわめきも聞き分ける!」
(Wikipediaより)
私がシシ神とフンババが特に似ているなぁと思ったのは3つ。
容貌が異形であること
シシ神の見た目も色んな動物をごちゃ混ぜにした異形の姿をしていますよね。
いろいろな生き物のパーツを集合してできたキメラのような生き物という点で非常に似ていると思います。
目があったら・・・
シシ神の場合は目が潰れ(※キャラクターのセリフ参照)、フンババの場合は死ぬという違いがありますが「似てる!」って思いませんか?
さりげない狩人の言葉一つにも共通点があるんだなぁと驚くばかりです。
首を切られ、持ち去られる
ギルガメッシュ叙事詩には諸説あるみたいですが、首を切られるシーンがあるようです。
そしてその首を持ち帰るという・・・。
もののけ姫のところどころに、ギルガメッシュ叙事詩が影響している事か分かるシーンがあります。
フンババは物語上、人間達にとっての「恐怖の象徴」として描かれています。
自然神フンババと共通点のあるシシ神も、「もののけ姫」という作品において人間にとっての「漠然とした恐怖」の象徴という一面があったのではないかと思います。
「もののけ姫に込められたテーマ」からみるシシ神の存在
宮崎駿監督へのインタビューやもののけ姫に関する著書の中で語られる内容に2つのテーマを見つけることができます。
- 憎悪をいかにコントロールできるのか
- 「この世の中に生きていて、いわれのない、不条理な、肉体的にも精神的な意味も含めてババを引いてしまった人間達」がどう生きていくのか
もののけ姫は、一度でも見たことがある人は分かると思うのですが、登場するキャラクターの多くが憎悪や怒りという感情を持っていることが分かります。
その中で、主人公アシタカは自分が呪われ村を出ていくことになるという不条理を受け入れながらも、タタラ場の人間たちとサンや動物など自然を守る者たちの間に入って生きようとします。
確かに、宮崎監督が問いかけているメッセージのようなものが、伝わってくる感じがありますよね。
今まで、あんまり気にせずに「もののけ姫」観てきてごめん、アシタカ。
よくよく考えると凄いよ、アシタカ。
優柔不断とか思ってごめんなさい。
さて、この「もののけ姫に込められたテーマ」から見ると、シシ神は憎悪の対象であったり、この世の不条理のように感じられますね。
特にラストシーンのシシ神の暴走は自然災害のようにあらゆる生き物の生命を理不尽に奪います。
暴走する巨大でおぞましいディダラボッチの姿が印象深いです。
結論としては、恐怖や理不尽、憎悪を具現化したキャラクターがシシ神で、だからこそ「もののけ姫」の物語において強烈なインパクトのある存在感となったのではないかと考察します。
昼の姿のシシ神もよくネット上で「顔が怖い」という感想をみかけますしね。
シシ神様、結構いい感じに笑みを浮かべてらっしゃると思うのですが・・・。
やっぱり、無意識に視聴者も恐怖や憎悪をシシ神そのものに感じているのではないでしょうか。
シシ神様は死んだのか?
もののけ姫のラストでは、シシ神の森が無くなり、シシ神もいなくなりました。
ですが、多くのサイトでシシ神は死んだ訳ではないと推察されています。
もののけ姫のパンフレットには「シシ神は月の満ち欠けと共に誕生と死を繰り返す」と書かれているそうです。
首を奪われたことでディダラボッチとなって暴走し、朝の姿に戻ることが出来なくなったシシ神。
朝日を浴びて消滅する直前になんとか首を取り戻しましたが、暴走状態時にジコ坊の証言どおり生命を吸ってふくらみすぎてパンク状態になってしまい、結局シシ神は消えてしまいました。
ふくらんで溢れ出した生命によってシシ神の森はこだまが一匹登場する程度に回復する、というラストが描かれていますね。
サンとアシタカの会話の中で、シシ神は死んではいないというセリフがあります。
シシ神の力で蘇った森でシシ神はまた生まれるのではないでしょうか。
シシ神様の森は実在する?その場所とは?
もののけ姫の舞台は、鹿児島県の屋久島と、青森県、秋田県の白神山地とされています。
その中でシシ神の森のモデルとなっているのが「白谷雲水峡」という屋久島の代表的な観光スポットの一つです。
写真を撮るとこだまが映ることもあるので、「木霊の森」とも呼ばれているみたいです。
とても幻想的な森ですよね。
一度は行ってみたい!
実際に白谷雲水峡まで行くには、屋久島を3時間くらい歩く必要があるので十分な準備をする必要があります。
できるならガイドさんに案内してもらうのがおすすめですよ。
ちなみに運が良ければ屋久島にしか生息していない屋久鹿に会うこともできるようです。
「シシ神様じゃーーー!シシ神様がおるぞーーー!」ってなること間違いなし。
まとめ
シシ神様をテーマにいろいろ考察させていただきましたが、もののけ姫すごい・・・!
シシ神様だけでもこの映画がいかによく考えられて制作されているのかが分かります。
宮崎駿監督はやっぱり偉大な方ですね。
もし「もののけ姫についてもっと知りたい!」という方がいましたら、こだまの都市伝説について考察する記事も書いているので、気が向いたらついでにお読みくださいませ。
最後に一言。
アシタカ、本当に優柔不断とか思ってすみませんでした。
コメント
私はカメルーン辺りに生息するマンドリルと言う動物を見たときに、もしかして獅子神様はマンドリルがモデルではないかと思いました。
名古屋の東山動物園にいます。最近はフクロテナガザルやゴリラ人気で影が薄いですが、顔にピンクとグレーの色のついた動物と言えばマンドリルぐらいしかいませんし、私は直感的にシシ神さまのモデルはマンドリルではと今でも思うのです。
kentaulce様
コメントありがとうございます!
マンドリルに似ているというのは正直私も思いました。笑
顔のピンクとグレーの色使いは確かにマンドリルをモチーフにしている可能性はあるので、kentaulce様が仰ているのも一理あると思います。
貴重なご意見ありがとうございます。
今後とも当サイトをよろしくお願いいたします。